作品制作のための「詩」のようなものを
思いつくままに
2000年~2005年のテーマは
「風」「海」「空」「光」「樹・木」
「はるのよかん」
ちいさなはるが
ポッ ポポとさいたよ
日当りのよい線路の土手沿いに
土筆 たんぽぽ
ぬくぬく陽だまり ひなたぼっこ
小さな春
ポッ ポポと咲いたよ
「春の予感」
春を呼ぶ風
白いこぶりの花を
枝にちらした
「拈華微笑」
学校の帰り道 角を曲がると
道は絨緞のように 桜色に染まっていた
八重の花びらが揺れる 母が微笑む
「ふりそそぐ」
緑の木漏れ日
透ける陽光
両手を広げて受けとめて
「五月の空」
五月になると樹木は空に向かう
艶やかな新芽が日を追うごとに緑を濃くし
ドキドキする内に秘めたエネルギーを発散させて
自由を求め伸びる
「母さん」
ふるさとの海
耳を澄ませば
母の声波音に重なる
「大地の風」
水張田(みはりだ)の早苗に
風わたるふるさと
浅緑の光 放つ
風が大地を吹き抜ける
夏の陽射しの中で
緑の風が生まれる
初秋
稲穂が揺れ
黄金色の波になる
「星降る(時の記憶)」
琴座のヴェガ 鷲座のアルタイル
翼を広げたデネヴに抱かれ 宙(そら)を旅する
夏の夜姉妹でよく空を見上げた
星が降ってくる
手をのばす
届きそうで届かない
夢の中 宙を旅する。
「青藍(せいらん)の風」
天の海に 月の舟
青藍の風に押され 漕ぎ出せば
くものなみ 雲の波
「夢へ挑む夏」
今 風の中を 駈け抜ける
「夢を抱いて」
翼を広げた鳥達よ
無垢の風を掴んで
高く飛べ
「紫陽花」
ひとあし早く七夕の
紫の星集め
六月の紫陽花
「朝の風」
ぽやぽやの朝を迎え
風さやさやと流れる
おはよう おはよう
何気ない新しい朝が
動き出す
「夏の朝の母の色(色の記憶) 」
乳白色の時が次第にはっきりと 色分けされた世界となっていく
朝が始まる
朝市の帰り道 母の手の中は 赤や緑や紫の
鮮やかな色で輝きあふれる
夏の朝の母の色
「川遊び(水の記憶)」
箱めがねで水中をのぞく
澄みわたる水の世界
すべての音が消える
岩陰に潜む魚をみつけた
父との川遊びは
感動の連続
「縁(えにし)」
あなたとの出逢いを
たどってみれば
それは
偶然の中の必然
ほんのわずかな細い糸をたどり
偶然の中の必然が
重なり合って
やってきた
「きらめく海」
空と海のはざまに
光る漁火
スパンコール
「刹那の光り(光の記憶)」
漆黒の闇を焦がす
線の光が
弧を描く
闇に咲く華
刹那の光りに
願いをこめて
「キラキラ光る(光の記憶)」
波打ち際で光る小石
光が石に反射する 掬いあげると
波に揉まれたガラスの破片
陽にかざすと緑に透けた
波は創造者に違いないと思った
「惑わすブルー(色の記憶)」
窓枠の額縁に夜空を嵌め込む
キャンドルを映すグラスには
青く揺らめくスカイダイビング
灯の消えない都会の夜
揺らめくブルーに心惑わす
「日常の切れ端(時の記憶)」
黄昏 薄紫の空 川面に街の灯が映り
ビルにはオレンジ色の幾何学模様
湾岸線にテールライトの赤い帯が伸び 深い夜へと繋がってゆく
何気ない時の流れを共有する
一日の終わりを確かめながら 過ごすひととき
なんでもない日々を過ごすこと それが幸福なのかもしれない
「言の葉」
喜びの言の葉も 悲しみの言の葉も
心という水面に波紋を広げ 記憶の底に沈んでゆく
ときには想いが あふれ出すことも
「断層」
閉じ込められた冬の記憶のように 積まれてゆく雪
春光が接点となり 雪も 冬の記憶も
水ぬるむように 融け出せばいい
「冬のひととき」
椿の花が二つ三つ 父の背中越し
ひとしきり降った雪の白が 赤い花を揺らした
「息吹」
雪解け 春の気配 稜線は山肌を見せ
木々は力強い息吹を 空に向ける
「雪の音」
窓の外 雪の音だけが聞こえる
真夜中に降り出した雪 目を閉じ 耳を澄ますと
闇の中 雪の音だけ
灯りを消すと 闇の中から窓だけがほの白く浮かび上がる
少女の頃、そこが夢の世界の入り口だった
「母さん」
眠れない夜 母さん あなたの声が聞こえてきます
苦しい時も悲しい時も
母さん あなたの言葉が支えとなり 心に響いています
「未来への期待」
早春の陽に融けだした雪色の道
透明の 生まれたばかりの空気を吸い込んで
少女は胸を震わせ 風をきって走り出す
未来へつながる道をさがして
「樹木」
幸せな種 芽生え 伸びる
水の一滴 光の一筋に支えられ
緑の大地に根を張り 一本の樹木となる